だーさんのウイスキー広場

安いものからそこそこ高いもの、オールドボトルまで。ウイスキーラヴァーのテイスティング記録、ウイスキーブログです。

グレンドロナック18年

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GLENDRONACH ALLARDICE Aged 18 years

グラス:テイスティンググラス

量:30ml

場所:BAR飲み(BAR ITSUMURA)

個人的評価:S どシェリーではないが、近年シェリー系でフルーティさとのバランスの良さは飲んでみる価値あり。

総合評価(コスパ):★6 1万円を切る価格帯のシェリー系では完成度が高い。

ラムレーズン、巨峰、バランスありつつも濃いめのシェリー香。バニラ、シナモンも軽く香る。時間経過と共に爽やかなブドウ、リンゴなどフルーティな香りも開いてくる
口に含むと黒糖、わずかに生木、華やかなシェリー香は後は引かず、余韻は比較的あっさり。リフィルシェリー樽のような淡い樽感、濃いオロロソの香りが同居する。

開封2週間のボトルでしたが、まだまだ飲みはじめは固い印象。時間経過でフルーティさが開いてきて、このボトルの本気はまだまだ先だと予感させてくれます。

 

シェリー系ウイスキーとして有名なグレンドロナックの18年ものです。オロロソシェリー樽を100%使用したドライタイプ。21年はペドロヒメネス主体で甘口の仕上がりとのことです。

正直な話、1万円以内のシェリー系ウイスキーとしては僕の経験の中では1番良いと思っています。バランスの良さ、近年系シェリー感、18年ものらしい余韻、シェリー系ウイスキーの色がどんどん薄くなってきている中、それでもなおバランスを保っている印象のボトルです。

終売の噂もありますので、興味のある方は1本持っていくのもいいかもしれません。

余市 シェリー&スイート(蒸留所限定)

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SINGLE MALT YOICHI(余市) SHERRY&SWEET

グラス:テイスティンググラス

量:15ml

場所:家飲み

個人的評価:A 

総合評価(コスパ):★3(500mlで6800円)

ゴムや硫黄が目立つ中にブランデー系の甘い香り。煮詰めたリンゴ、ブルーベリージャム。わずかにソルティな風味も。中間には渋味のあるウッディさが色濃く出現。余韻はゴムを含んだ甘い香りが続く。
ハイプルーフの割には滑らかな口当たり。まずサルファーな香味が口を覆う。そこを抜けると甘味のあるシェリー、ドライレーズンの香りが強く感じられる。甘味も強い。香りほどの渋味はあまり感じず、オイリーで甘い口当たりが残っていく。
わずかに加水するとサルファリーな癖の強さは和らぐがアルコールの刺激が強くなる。フレッシュな巨峰、濃厚なバニラ、口当たりの酸味、出汁系の旨味が拾える。
 
いただきもののボトルです。
硫黄を除けば、濃い目のシェリー香にハイプルーフの割にはなめらかで甘い口当たり、シェリー樽由来のスパニッシュオークらしさとA+~S程度の評価になっていてもおかしくありません。
加水するとアルコールのアタックが強く感じたので少量をストレートでまったり楽しむのが良さそうです。
 
僕がウイスキーの中で唯一苦手なフレーバーが硫黄(サルファリー)でしてそのためにこのボトルの評価はやや低いものとなっています。硫黄が気にならない人であれば十分楽しめる個性があると思います。ボトルから香りをかいだ時点で「ウッ・・・」と思うほどのフレーバーがあり、苦手な人は回避推奨です。(苦笑)。
硫黄に関してはニッカ原酒、特にシェリー樽にはもれなくついてきますので、そこで好み・評価は分かれると思います。蒸留所限定余市はピーティ&ソルティも飲んだことがありますが、そちらは硫黄フレーバーはあまり感じられず、余市系のヘビーピートと焦がした麦芽感が感じられるもので好みでした。
 

ニッカウイスキー余市蒸留所限定で販売されているコンセプトボトルは元々は12年ものが販売されていましたが、終売のちノンエイジで復活した経緯があります。12年ものは飲んでいないのでわかりませんが、コンセプトとしては同系統のものと思われます。

ニッカ原酒をコンセプト別に楽しむ、これはこれで蒸留所限定のボトルとしては面白い取り組みだと思います。

ネイキッドグラウス

 

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THE NAKED GROUSE

度数:40%

グラス:テイスティンググラス

量:30ml

場所:自宅

 オススメの飲み方:ロックまたはストレート(ショットグラス)

個人的評価:A この価格帯では強いシェリーの香味が感じられる

総合評価(コスパ):★7 700mlで3000円程度。この価格帯でシェリー風味が味わえる価値は高い。オフィシャルで手に入りやすいのも◎。

 

チョコホイップの甘い香り。プルーン、カカオのタンニンのニュアンスも感じる。中盤にはピートが乗り、松ヤニのような重い香味。後半には強い樽感、バニラ、ウッディ。後熟らしく余韻は短め。
口当たりは粘性のあるべっこう飴。わずかな塩気と穀物系の素朴な甘味が広がる、とうきびチョコ。中間は比較的平坦だが後半は樽由来のわずかな渋味が感じられる

 ブランデーに近い粘性のある甘味・渋味がありますので、食後酒としてショットグラスでストレート、加水で甘味を抑えたロックが良かったです。テイスティンググラスだと甘味が開きすぎる印象。加水では中間の平坦さが伸びてしまい、これじゃなくてもいい感を感じます。とは言っても自宅用ウイスキー、自分の好きな飲み方で飲むのが一番です。寒い季節の方が美味しく飲めると思います。

 

 フェイマスグラウスのオフィシャルボトルの1つ、ネイキッドグラウスです。これは通常のフェイマスグラウスをファーストフィルシェリー樽で4年間後熟させたものになります。飲みはじめはシェリー感主体で単調ですが、時間経過とともに麦芽感や塩気など他の要素が浮かび上がってきて、この価格帯ではなかなか楽しめる構成です。

 煙、ピートが結構感じられ、同じシェリー系でもマッカランやドロナック、ベンリアックの飲みやすさ・スムーズさを求めると「なんか違うな」という感じになりかねないです。エドラダワーやファークラス、キーモルトのハイランドパークと同じどっしりと重厚な味わいです。ヘザーハニーと評される松ヤニやタンニン、オイリーさが受け入れられるかどうかで好みが分かれると思います。個人的意見ですが、これだけ重さがあるのに濃厚甘い系なので個人の評価はそれなりです、すみません。多分2本目は買わないです。

 ただ、3000円程度で買えるウイスキーとしては他にない要素を持っていますので、この価格帯を買う方であれば飲んでみて損はないと思います。ハイボールやロックなどで飲むのも良いですよ。

地理的要素と味わい(ピート、スモーキー)

 ウイスキー独特のスモーキーフレーバーやピーティ、あるいはヨード香と評される独特の香り。好きな人は好きだしダメな人はダメ、ウイスキーが好きでもヘビーなピーティさは全然受け付けないという方もいらっしゃいます。

 

 ウイスキーの製造工程の初期に麦芽に熱を加えて乾燥させます。この時に使われる燃料によってウイスキーにしかない独特のフレーバーが付加されます。

 スコットランドでは従来乾燥の工程に泥炭(ピート)を使用していました。泥炭は湖や湿地帯で植物や苔が堆積してできたもので、石炭にまではなっていない植物の死骸です。スコットランドは家庭用燃料として裏庭で掘れる泥炭を使うほど、豊富な資源としてあります。

 余談ですが、泥炭は可燃性で温度が50~60℃で発火してしまうため豊富な地帯では泥炭火災という山火事が毎年のように起きて問題になっています。地表に燃えやすい石炭がばらまかれているような状態ですからね…。

 ピート、スモーキーと呼ばれるフレーバーは乾燥工程でどのような燃料を使うかによって変化しますが、大きく3つに分類できます。

 

 ①ヨード香

 ラフロイグアードベッグなどアイラモルトに付加される香りです。ピートの中でも海藻類などが堆積した泥炭を使用することによって塩素や臭素と結びついたフェノール化合物が生成されます。これがいわゆる「正露丸」や「イソジン」と呼ばれる独特の香りを生み出します。

アイラモルトアイランズのピーティなモルトは生産地が島であり、そこで採取される泥炭は海藻類の堆積が含まれているためこのような香りがします。

 

 ②スモーキーフレーバー

 内陸系ピートとも呼ばれますが、シダ植物などの地上植物の堆積によってできた泥炭を用いています。フェノール化合物はアルデヒド系で燻製のようないぶした香りが麦芽に付加されます。内陸で採取されたピートはこのような純粋なスモーキーフレーバー、燻製に近いニュアンスが得られます。

 ニッカの余市モルトもこのスモーキーフレーバーに近いと思われます。

 

 ③ノンピート

 泥炭を使わずに乾燥させた麦芽を使用します。実はこれ、ビールの製造方法と全く同じですよね。これで糖化させてホップを入れたらビールになっちゃいます。ビールと同様の製法であれば熱風乾燥のはずですが実際はわかりません。麦芽本来の味がダイレクトに感じられます。

 

 現在の蒸留所は一部を除いて、ほとんどの蒸留所はモルトスターと呼ばれる製麦業者に麦芽・乾燥の工程まで委託しています。それでも蒸留所によって全く異なるのは、蒸留所がモルトスターに対して、フェノール化合物の濃度や使用するピート(主に蒸留所付近のもの)を非常に細かく指定しているからだそうです。

 

 まぁ理屈はこのくらいにしておいて、好みの話を。

 ピートの香り、特にヨード香は日本人に限らずほとんどの人にとって慣れていない香りです。しかし、アイラ島に住んでいる人、育った人はこのヨード香は常に身近に存在する香りです。アイラ島民と僕らが感じるヨード香の強さは同じ濃度だとしても感じるニュアンスは大きく異なると思います。

 何が言いたいのかと言うと、無理に好きになる必要はないのかなと。僕はぶっちゃけ①のヨード香はそこまで好きじゃありません。ただ全く受け付けないレベルではないので、たまには飲みたくなる程度には好きです。やはり②スモーキーフレーバー、③ノンピート系の方が好きです。

 好きなボトルはスコッチならアラン、ベンリアック、バランタイン。ジャパニーズなら響、白州、竹鶴ですからね。ヨード香の欠片もありません(笑)。

 好みを探る上で食わず嫌いせずに色々なボトルを飲んでみることは必要と思いますが、その経験値を元に自分がどのような香味を好ましいと思うのか、考えてみると好みの銘柄を見つけるヒントになると思います。

響17年 現行品

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私事ですが、子供が生まれたため記念開栓です! 

 

SUNTORY WHISKY HIBIKI 17 years Old

度数:43%

グラス:テイスティンググラス

量:50ml

場所:家飲み

個人的評価:S+ 繊細で多層的なフルーティな麦芽・木材系のフレーバー。飲み進めるほどに余韻が重なる味わい。

総合評価(コスパ):★5 700mlで12000円。単価は高いが、バランタインジョニーウォーカーのハイエンドと比較しても遜色ない。

 

トロピカルフルーツ、苺、パイナップル、ライチ、みかん。甘さ主体の果物の香りからバニラ、キャラメル、シトラス、わずかなピートのクセのあるフレーバーへ切り替わる。最後には木材の香りとゴムのような余韻を残す。

味わいはやや粘性のある口当たりに甘味が広がり、モルトだけではない穀物系の旨味へ変化する。最後はゴム・木材のわずかなえぐみを残して消えていく。

豊かな香味は飲み進めるほどに余韻が重なり、美味さ・満足度が高まる印象。

 

 
サントリーブレンデッドウイスキーの最高峰、響シリーズ。この17年、オフィシャルボトルとしての完成度が非常に高いです。フルーティかつオーキーな多層的な香りが押し寄せる、豊かなフレーバーと日本らしい繊細かつ豊かな香りのバリエーション。価格は高いですが完成度も高いです。昔はオークションでは5000円で買えたらしいですからね、うらやましい限りですホントに。
 
響17年の凄いポイントは飲み進めるほどに余韻が重なり、飲めば飲むほど美味いと感じさせてくれるところです。バランタイン17年は1口の中で完結する完成度の高さですが、響は一口目はむしろ「こんなもんだっけ?」と思わせて、徐々に盛り上がってくるオーケストラの様相を感じます。
 
僕は山崎のミズナラ原酒を飲んだことがないのでミズナラについて語れるほどではありませんが、響17年とイチローモルトDDの共通項としてはトロピカルフレーバーと、香り全体を包むベビーパウダーや香水系のニュアンスを感じます。それを一応ミズナラ香なのかな?と推測していますが、本当のところはどうなんでしょう。蒸留所に行った際には飲んでみたいと思います。
 

アラン ソーテルヌカスク

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The Arran Single Malt Sauternes Cask Finish

度数:53%

グラス:テイスティンググラス

量:30ml

場所:BAR飲み(BAR ITSUMURA)

個人的評価:A そのままアランにソーテルヌの香りを載せている印象。ソーテルヌカスク好きならどうぞ

総合評価(コスパ):★4 700mlで6000円弱 ソーテルヌカスクフィニッシュでは平均的な価格

 

シロップの甘さ、クリームチーズ、レモンの香り。
口に含むとハイプルーフらしいアタックと豊かな麦芽感。リンゴ、蜜、若干の酸味と塩気。余韻は甘いオーク香が長く続く。

 

ふくよかな麦芽感、フルーティーさで高い評価を集めるアラン。そのカスクフィニッシュの1つです。

ソーテルヌカスクでのフィニッシュはアランの他にベンリアック、タリバーティン、グレンモーレンジィなどでも行っています。ソーテルヌ樽の特徴としてはレモンケーキなどと評されるまとわりつくような甘い香りです。これは明らかに本来ウイスキーにはない香りであり、フィニッシュでの数か月程度の貯蔵では本来の酒質に甘い香りをかぶせているようになってしまい、どうしてもウイスキー本体との分離感を感じてしまうことが多いです。

ただソーテルヌカスクの甘い香りは僕もけっこう好きなのでBARでの飲みはじめ、ハーフショット程度で飲むには良いと思っています。

余市 ノンエイジ

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SINGLE MALT YOIDHI(余市

グラス:テイスティンググラス

量:15ml

場所:家飲み

開封時期:開封直後

オススメの飲み方:ハーフロック

個人的評価:A 

総合評価(コスパ):★3(フルボトル4000円前後)

つんとしたアルコールの刺激臭の後にピーティとバニラ、オレンジ、パイナップル、麦芽風味。わずかに硫黄と潮気。後半にはウッディ、焦がし砂糖の香りが現れる。
口に含むとフルーティーさとスモーキー、ややオイリーな麦芽風味、わずかにソルティ。甘味は少なく、ドライな余韻がウッディとともに表れる。
わずかな加水ではフレッシュなキウイの香りがたち、口当たりはなめらかに。新樽由来の濃厚なウッディが顔を覗かせる。
 
 ニッカラインナップ再編で登場したシングルモルト余市です。香味から推測すると以前記事にした宮城峡(テイスティング記事)と比較して若い原酒構成ではないかと思います。多様な香味がニッカモルトの特徴ですが、若い余市は全般的にそのまとまりが悪くやんちゃな印象です。熟成すると角がとれて多様な香味が複雑さに変わってきます。
 
 余市の若さをどう抑えて良い部分を引き出すか、今のところのベストはハーフロックです。加水と冷却でスモーキーがやや抑えられ、口当たりの甘味が増します。舌の上で温まることでウッディが開いてくる。加水・温度変化でウイスキーの持つ様相は全く変わりますし、そういう経験を積むことでウイスキーの楽しみ方に幅が出るなと感じています。
 僕が普段買うのは5000円以下の普及価格帯ウイスキーが主ですので、自分なりのベストポイント探しも楽しみの1つです。
 
 話は変わりますが、ニッカに限らず日本の蒸留所の名前を冠するノンエイジ価格帯のウイスキーコスパという点において非常に厳しい評価をせざるを得ない状況です。フルボトル4000円という価格はスコッチならばオフィシャルのエイジもの(10~12年)が多く買える価格帯であり、味わいという点でも1つ下と言わざるを得ません。
 この価格帯で頑張ってくれると日本におけるウイスキーの普及は進むと思います。普及価格のブレンデッドからいきなりボトル1万円クラスのウイスキーに手を出すことはまずありえないでしょう。ステップアップとしてシングルモルト入門編と言える5000円以内のウイスキーを検討することが多いと思います。ここの価格帯の充実こそがウイスキーの消費拡大のキーになるのではないかと思います。まぁこの価格帯こそが一番難しい価格帯でもあるんですけどね…。