だーさんのウイスキー広場

安いものからそこそこ高いもの、オールドボトルまで。ウイスキーラヴァーのテイスティング記録、ウイスキーブログです。

地理的要素と味わい(ピート、スモーキー)

 ウイスキー独特のスモーキーフレーバーやピーティ、あるいはヨード香と評される独特の香り。好きな人は好きだしダメな人はダメ、ウイスキーが好きでもヘビーなピーティさは全然受け付けないという方もいらっしゃいます。

 

 ウイスキーの製造工程の初期に麦芽に熱を加えて乾燥させます。この時に使われる燃料によってウイスキーにしかない独特のフレーバーが付加されます。

 スコットランドでは従来乾燥の工程に泥炭(ピート)を使用していました。泥炭は湖や湿地帯で植物や苔が堆積してできたもので、石炭にまではなっていない植物の死骸です。スコットランドは家庭用燃料として裏庭で掘れる泥炭を使うほど、豊富な資源としてあります。

 余談ですが、泥炭は可燃性で温度が50~60℃で発火してしまうため豊富な地帯では泥炭火災という山火事が毎年のように起きて問題になっています。地表に燃えやすい石炭がばらまかれているような状態ですからね…。

 ピート、スモーキーと呼ばれるフレーバーは乾燥工程でどのような燃料を使うかによって変化しますが、大きく3つに分類できます。

 

 ①ヨード香

 ラフロイグアードベッグなどアイラモルトに付加される香りです。ピートの中でも海藻類などが堆積した泥炭を使用することによって塩素や臭素と結びついたフェノール化合物が生成されます。これがいわゆる「正露丸」や「イソジン」と呼ばれる独特の香りを生み出します。

アイラモルトアイランズのピーティなモルトは生産地が島であり、そこで採取される泥炭は海藻類の堆積が含まれているためこのような香りがします。

 

 ②スモーキーフレーバー

 内陸系ピートとも呼ばれますが、シダ植物などの地上植物の堆積によってできた泥炭を用いています。フェノール化合物はアルデヒド系で燻製のようないぶした香りが麦芽に付加されます。内陸で採取されたピートはこのような純粋なスモーキーフレーバー、燻製に近いニュアンスが得られます。

 ニッカの余市モルトもこのスモーキーフレーバーに近いと思われます。

 

 ③ノンピート

 泥炭を使わずに乾燥させた麦芽を使用します。実はこれ、ビールの製造方法と全く同じですよね。これで糖化させてホップを入れたらビールになっちゃいます。ビールと同様の製法であれば熱風乾燥のはずですが実際はわかりません。麦芽本来の味がダイレクトに感じられます。

 

 現在の蒸留所は一部を除いて、ほとんどの蒸留所はモルトスターと呼ばれる製麦業者に麦芽・乾燥の工程まで委託しています。それでも蒸留所によって全く異なるのは、蒸留所がモルトスターに対して、フェノール化合物の濃度や使用するピート(主に蒸留所付近のもの)を非常に細かく指定しているからだそうです。

 

 まぁ理屈はこのくらいにしておいて、好みの話を。

 ピートの香り、特にヨード香は日本人に限らずほとんどの人にとって慣れていない香りです。しかし、アイラ島に住んでいる人、育った人はこのヨード香は常に身近に存在する香りです。アイラ島民と僕らが感じるヨード香の強さは同じ濃度だとしても感じるニュアンスは大きく異なると思います。

 何が言いたいのかと言うと、無理に好きになる必要はないのかなと。僕はぶっちゃけ①のヨード香はそこまで好きじゃありません。ただ全く受け付けないレベルではないので、たまには飲みたくなる程度には好きです。やはり②スモーキーフレーバー、③ノンピート系の方が好きです。

 好きなボトルはスコッチならアラン、ベンリアック、バランタイン。ジャパニーズなら響、白州、竹鶴ですからね。ヨード香の欠片もありません(笑)。

 好みを探る上で食わず嫌いせずに色々なボトルを飲んでみることは必要と思いますが、その経験値を元に自分がどのような香味を好ましいと思うのか、考えてみると好みの銘柄を見つけるヒントになると思います。